ワープロ脳

ある行列に並んでいると、後ろにいる女性二人の会話を耳が拾う。

女A「〜〜ちゃんに訊かれたとき、私『ダンボウ』の『ボウ』間違えちゃってえ」
どうやら漢字の話らしい。
女Q「えー、どういった按配に?」
女A「ボウカンのボウ、って言っちゃったのゥ」

傍観のボウ:暖房な訳だから、暖傍。暖かい傍ら。
暴漢のボウ:暖暴。暖かな暴事。何のこっちゃ分からん。

その後も会話を聞いていると、どうやら彼女は「防寒」を思い浮かべていたらしい。それにしても暖防もどうかと思う。暖気を防いでどうすんだ。それとも「ふせぐ」と「ふさぐ」を、会話に忙殺されてコンパウンドにしてしまったゆえに、不思議に思わなかったのだろうか。暖気を塞ぐ。暖塞。息苦しい字面である。

それにしても『暖傍』は、なかなか風情がある言葉に見える。焚火とか炉辺とかを連想させる。
節句も粗方過ぎ、暖傍から離れられぬ寒さとなって参りました」みたいな。
それでは『暖暴』はどうか。冬扇、というような、暖をとり過ぎて暑くなること、利き過ぎた暖房なんかを表現出来そうである。「暖暴は風邪に勝る不養生なりぬれば、努々寒風と親しむを厭するべからず」みたいな。それにしてもキーボードばっかりで文章書いてると、手書きの際に間違った変換候補を書いてしまいがちである。機械による人間操作の魔手を感じる。チュンソフ党の陰謀かしら。